境界立会ってなにをするの?
普通に暮らしていて、「境界立会をすること」は珍しい出来事です。一生に1回あるかないか、という人も多いと思います。
境界立会をお願いする側になった、逆に、お願いされた。どちらにしても珍しいことなので、過度に不安になったり、構えすぎたりもします。
境界立会をお願いされた場合、何か話さなくてはいけないの?話を聞いていればいいの?疑問があるかと思います。
実際の境界立会の現場はどんな風に進むのか。一例を紹介してみます。
なぜ境界立会するのか
そもそも、境界立会がなぜ発生するのか、そして何のためにするのでしょうか?
境界を確定しなければいけない事情がある
境界立会が発生する理由の多くは、この2つです。
- 土地を売買するから
- 分筆登記をするから
「土地を売買するから」←この場合の目的は、これから買う人、つまり新しい所有者に対して、土地の範囲を明確にして引き渡すことです。範囲が明確な土地は、安心して使用することができますし、境界に関するトラブルが起きる可能性は劇的に減るわけです。そして、不動産業者としても、そのような責任をもって売買・仲介することは業者としての信用にもつながりますから、近年は境界を確定しての売買が増えています。
「分筆登記をするから」←これは土地を複数に分ける事ですが、周囲との境界立会が必要になります。分割後のすべての土地の形状を正確に記録するためです。新たに土地を分ける分割線だけでなく、周囲の線、つまり隣地との境界も正確に図面を残さなければいけないのです。周囲がはっきりしない状態で、分割する線だけを正確に表示しても、分割後の土地の形状は結局はっきりしないからです。分筆する時に法務局に提出しなければいけない図面を「地積測量図」と言います。
このように、何らかの理由があって、境界立会が行われることになります。
事前に声かけがあるとすごく良い
売買や分筆など、測量を行う事情がある人は、周囲の所有者に声をかけておくと、非常にその後の流れがスムーズになります。
土地を売る人「土地を売る事になって測量する事になったから、後日測量屋さんが訪ねてくるからよろしくお願いしますね」
周りの人「わかりましたよ~」
これくらいでも、会話があると、非常に境界立会が上手くいく可能性が高くなります。やはり、みなさん人間ですから、いきなり見たこともない業者と話が始まるよりも、知っている人に声をかけられていれば、安心感が違います。不必要な警戒をすることもなくなります。
境界に同意できない理由が境界ではなく別の事にある、という事例はあります。そうなった場合は専門家がどれだけ調べて説明しても、意味は薄くなります。
当日の流れ
境界立会は、原則的に、現地で行うことになります。
やはり現場を見ながらのほうが話しが早いですし、理解しやすいからです。やむを得ない事情がある時(天気がものすごく悪い、遠方にお住まい等)は、資料を見ながら室内で話し合ったり、電話で、という事もああります。
まず、担当する土地家屋調査士が挨拶をし、測量の経緯を説明します。
その後、まずは「境界がどこか認識はありますか」といったことを確認させてもらいます。
それから、法務局の図面や各種資料から推察される境界線の説明をさせて頂きます。
〇〇年に作成の図面があり、周囲の境界票を確認すると、図面が示す境界はここになります、といった感じです。
図面がある場合は出す
隣接所有者の方が図面をお持ちの場合があります。境界立会をお願いされた側は、図面があるという事でしたら、ぜひ出して欲しいです。境界立会をする側もそうです。自分に不利と思い図面の存在を隠したまま依頼されるパターンもありますが、あまり意味はないでしょう。境界立会をお願いされた方は、図面を引っ張り出して見せた結果、土地家屋調査士が提示する境界と辺長などが違う可能性もあります。
その場合「違っている理由」を説明させて頂いたり、様々な図面がありますので、その図面の性格を説明させて頂いたりします。もちろん、お隣の方がお持ちの図面が真実の境界を示している事もあり得ます。
また、土地家屋調査士がどれだけ調べても、古くから現地に住んでいる人の見解が正しい事はあります。
その場合でも、古くからの住人の認識と、法務局等に保管される資料が違っている理由があるかもしれません。説明させて頂きます。
あらゆる情報をオープンにした上で、関係者全員が納得できれば、境界立会は終わりです。
境界に納得がいかない場合やもう少し検討材料がいるとなった場合は、測量範囲を広げるなどの対応を行う事になります。
そしてその調査結果を基に、後日話をすることになります。
境界はお互いのもの
下の図ではAの土地を測量して、Aの土地の境界が確定した例です。境界点4点とも確定しています。それは同時にBの土地も2点確定したことになりますよね。境界はお互いのものだからです。
測量をした理由は、Aが土地を売却するためだったとします。この場合、Aが境界確定測量を実施する必要性があったため、Aが土地家屋調査士に依頼して費用を負担する事が多いでしょう。売買において「境界確定は売主の責任において行う」ことが多いためです。Bとしては費用はかけていないけど、自分の土地の境界点4点のうち2点が確定したことになりますから、考えようによっては悪いことではありませんね。
新しく土地を買う人にとっては、境界がハッキリしていることは当然、安心感があります。それはお隣さんにとっても、同じ事で、境界で今後トラブルになる可能性がぐんと低くなるという事です。境界が明確になる事でもたらされる利益は、両者に及びます。
確認後の流れ
境界に関係者全員が納得した後で境界標を設置するという流れになります。境界標の設置は時間がかかりますから、後日行います。関係者の確認した点に正確に土地家屋調査士が責任をもって設置します。
測量の目的が「土地の売買」であれば、その後「境界確認書」を作成して捺印する、という事もあります。
測量の目的が「分筆登記をすること」であれば、「地積測量図」を作成して、法務局に収める事になります。この「地積測量図」は、誰もが取得できる図面なので、公式な図面として公に境界を主張できるものとなります。
誰もが取得できるというのは、自分の土地でなくても取得できるという意味で、隣の土地であっても、他県の土地であっても、日本全国の土地を誰もが取得できます。(但し、地積測量図が備わっている土地に限ります)
境界立会を頼まれたら、知っておいてほしい事
境界立会を頼まれることは、人生で数えるほどしかありませんし、無いかもしれません。(土地をたくさん持っている人は別ですが)
それだけ稀なことなので、必要以上に緊張したり、構えてしまうのは当然とも言えます。
加えて、「土地家屋調査士」という聞きなれない職業の人が境界について説明してくる。そこでこう不安に思う人もいるかもしれません。
「依頼者の土地を少しでも広げようとしているのでは?」
ですが、これは考えにくいです。
もし仮に依頼者の土地を広げようとして、意図的に広げた面積で、周囲の確認を取り、境界確認の捺印までもらったとします。
すると、法務局や役所の図面、座標などの客観的な資料と何らかの差が生じてしまい、知識のない人からは分からなかったとしても、見る人が見れば分かってしまう状態になります。
例えば、意図的に広げた土地を2つに分ける事になり、分筆登記を申請する事になったとします。分筆登記を申請すれば法務局の登記官、その他職員がチェックする訳です。その時に、おかしいな、となってしまうわけです。登記官による調査の結果、土地の境界を意図的にズラしたと判断されれば、分筆登記は通りませんし、自ずと目的が達成できなくなるわけです。これにより、依頼者は結果として不利益を被る事になります。
一方、依頼者の土地を広げようとした土地家屋調査士は、専門家(法務局の職員等)から見ればすぐ分かってしまう訳ですから、悪質と判断されれば、業務停止等のペナルティが課される可能性もあります。つまりメリットがないんです。
土地を意図的に広げても見る人が見れば分かるのでメリットがない
この事を知っておいて欲しいです。これを知っていれば、余計な不安、不信感を減らせるのではないでしょうか。
まとめ
境界立会は土地の売買や分筆、建築のタイミングで起こる事が多い
境界はお互いのものなので、依頼されたらぜひ協力してほしい
事前に土地所有者から周囲へ声掛けがあると、非常にスムーズになる
当日は、土地家屋調査士等による説明がある
境界は客観的な資料に基づいて導き出される
土地家屋調査士が一方の土地を故意に広げるようなことはしないし、してもメリットがない
以上、境界立会をこれからお願いする時、お願いされた時に思い出して頂ければと思います。
この記事が少しでもみなさんのお悩みの解決、財産を守る事にお役に立てればと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございます。