うちは図面があるから大丈夫・・?
結論・・図面があるからと言って境界について安心とは言えません!
境界立会の仕事をする中で、「うちには図面があるから境界は問題ないよ」といった言葉を耳にすることがあります。
「図面」とはなんなのでしょうか。その「図面」があることであなたの土地の境界はどれくらい安心できるのでしょうか?
たいてい「配置図」はある
建物を建築した土地なら、おそらくある図面があります。
それは「配置図」です。「うちは図面があるから・・」の図面はたいていの場合この「配置図」である事が多いです。
配置図とは、建築する際に提出しなければならない図面のひとつですから、大抵の家にはあります。
建築の際に配置図を提出する目的は、おおよそ敷地のどの位置に建物が存するかを示すことです。
従って、境界が正しいかどうかは特段チェックされるものではありません。
もちろん、正しく表示されている図面もたくさんあります。
しかし、建築が目的である「確認申請の添付図面」であるという性質上、
境界を他者に主張できる図面ではない、という事です。
区画整理と地籍調査
「家から図面がみつからないんだけど、どこかにはあるんや」
こう仰られる方もおります。この場合は、上述した「配置図」とは違うかもしれません。
よくあるパターンとしては、以下の通りです。
①区画整理の図面がある(けど家にはない)
②地籍調査の図面がある(けど家にはない)
③地積測量図がある(けど家にはない)
①から説明しましょう。
「区画整理」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?
新たに土地を線引きしなおす事なんです。(農地の場合、耕地整理や土地改良とも言います)
この「区画整理」が行われた年代にもよるのですが、図面が存在します。ご家庭になくても、
どこかにある可能性が高いです。それは市役所かもしれませんし、法務局かもしれませんし、どこかの公民館かもしれません。
その図面には「辺長」が記載されていますし、比較的近年の区画整理であれば、「座標」が存在し、より正確で復元性の高い資料として使用できます。
土地家屋調査士が境界を調査する際にも数ある図面の中でも、かなり重要なものです。
なぜなら、土地が新たに線引きされた際に備わる最初の図面だからです。ひとつの土地に複数の図面が備わることは珍しい事ではないので、その順番が重要なのです。
しかし区画整理の図面は区画整理地にしかありません。
ご自身の土地が「区画整理地」かどうかは法務局で取得できる、土地の「全部事項証明書」で調べる事ができます。
近年はオンラインでも請求できます。
②地籍調査の図面がある
これはどういった土地にあるのかといいますと、
地方公共団体が行う「地籍調査」という事業が実施された地域です。こちらも「区画整理」と同じように辺長が記載されており、近年であれば「座標」が備わっています。
境界調査の上で有力な図面になる事は確かなのですが、「区画整理の図面」との違いは、土地の起源となる図面ではないという事です。
ご自身の土地が、②に該当するかどうかは、やはり法務局で取得する「全部事項証明書」又は「公図」で調べる事ができます。
該当する場合、「公図」には“地籍図”という単語が、「全部事項証明書」には“国土調査による成果”という単語が記載されています。
③について説明します。
「地積測量図」ですが、こちらも全ての土地に存在するわけではありません。
基本的に土地が「分筆」される時に備わる図面です。法務局又はネットで取得できます。
ご自身の土地が「○番」ではなくて「○番○」、例えば「5番」ではなくて「5番1」とか。このようになっていれば、分筆されたことがある可能性が高いです。
分筆されたのがあまりに昔だと(昭和40年以前とか)法務局に行っても地積測量図はないかもしれません。
注意点としては①②③ともに作成された年代によって精度に大きく差がありますし、作成者によっても違います。
理由は長くなるので割愛しますが、平成18年以降の図面であれば、信頼度が高くなることがあります。
図面があればそれで安心とはいえない
「配置図」「区画整理」「地籍調査」「地積測量図」
上記がよくある図面ですが、地域によっては一筆台帳、建物図面(一応土地の形状は書かれている)など様々な図面があります。
図面の作成された年代、作成者によって正確性に大きく違いがありますが、正確な図面があれば境界は安心と言えるのでしょうか?
図面があっても、それが現地でどこを示すか分かりにくければ意味がありませんし、杭があってもお互いの了解のもと入っているかは分かりません。
(勝手に杭を移動させたりすることは刑法で境界損壊罪という事ですが、実際に身近に起こりえることです)
土地家屋調査士が携わる「境界確定測量」では、
- 永続性のある境界標
- 現地の境界標が損壊しても復元可能な測量データ
- 隣接地所有者の境界確認の捺印
これらが備わることで、最も大切な「揉める前の予防」ができ、
次世代・次の所有者に安心を渡すことができます。
土地を売却する事になった場合など、必要に駆られて境界確定を行う事がほとんどです。
今、住んでいて何の問題もないのに急にわざわざ費用をかけてまで測量する必要はないんじゃないの?
仰る通りです。必要な時にすればいいと思います。
ただ、境界問題はこじれると境界への不満を超えて隣地との憎しみあいに発展してしまうケースもあります。
そうなると、残念ですが通常の境界確定はほぼ不可能と言えるでしょう。だから予防が大切なのです。
境界は自由に動かすことができない
また稀なパターンとして、隣地同士、親の世代から仲がよく、境界もお互いに同じ線で認識している。という場合でも境界に問題がある事があります。
何も問題ないように感じますが、仲の良い方にあるパターンとして、土地の一部を無償で使ってもらっている。それが長年続き、譲与しているような状態の事があります。
そんなやりとりをしていたのが、親やおじいちゃんおばあちゃんであった場合は当事者である本人達がいない場合も考えられます。
相続人である子や孫からすると現在目に見えている(使用している)境界が正しいと当然思います。
しかし、境界というのは各人の取り決めによって勝手に動かすことができないのです。ですので、個人同士の取り決めによって使用範囲を変える事は全く問題ないのですが、
分筆登記や所有権移転登記を経ないと、境界はまだ動いていないのです。
まとめ
土地の事例をいくつか挙げましたが、土地は千差万別です。
土地家屋調査士による境界確定測量をしていなくても、ある程度境界がハッキリした土地もあります。どこが境界か全く見当もつかない土地もあります。
ほとんどの土地はその中間です。
「配置図」「区画整理」「地籍調査」「地積測量図」
まずは、自分の土地にどんな図面があるか調べてみても興味深いのではないでしょうか。
この記事が自分の財産の保全、そして隣地の方と良い関係を継続するための一助となれば幸いです。