表題部変更登記ってなに?
表題部変更登記。どんな登記でしょうか。「表題部」を変更するのかな?じゃあ「表題部」ってなに?
今回は、建物の表題部変更登記についてわかりやすく解説していきます。
表題部とは
不動産には、「全部事項証明書」という、登記事項を記載した書類があります。(謄本とも呼ばれます)
この「全部事項証明書」には「表題部」と「権利部」があり、それぞれ別の事が記載されています。
「表題部」は物件の概要、つまり基本データが記載されます。
「権利部」はその名の通り、権利に関する事項が記載されます。所有権は○○さん、□□銀行の抵当権がついている、○○から△△に相続、そんな感じです。
そして今回は建物の「表題部」について詳しく解説していきます。
表題部の記載内容
表題部には以下の内容が記載されています。
- 所在
- 家屋番号
- 種類
- 構造
- 床面積
- 登記原因及びその日付
ひとつずつ解説していきます。
「所在」とは、まさに物件の所在地のことで、「○○市△△町1丁目□□番地」という風に記載されます。都道府県は記載されません。
「家屋番号」とは、物件とともに家屋を特定するために割り振られる番号です。5番地の建物であれば、家屋番号は「5番」になります。また、広い土地の場合、ひとつの地番に複数の建物が建つこともありますよね。例えば、5番地にすでに家屋番号「5番」の建物があり、後でもう1棟新築された場合は「5番の2」という家屋番号になります。
「種類」とは、建物の用途に合わせてつけられるものです。代表的なものは居宅、店舗、物置、共同住宅などで、使用目的に合わせて設定されます。
「構造」では、建物の構成材料、屋根の種類、階数の3つの情報を表示します。例えば、「木造瓦ぶき2階建」「鉄骨造陸屋根4階建」などです。
「床面積」とは、ずばり床面積です。○○坪ではなく、○○㎡で表示されます。また、不動産登記法に基づいて床面積が計算されますので、一部建築基準法と異なる可能性があります。建物を新築する際に提出する書類である、「建築確認申請」は建築基準法に基づくものであるため、実際に登記される面積とは異なる事があります。
「登記原因及びその日付」ですが、登記原因とは、具体的には「新築」や「増築」や「一部取り壊し」など、建物が出来た時や床面積に変更が生じた原因です。また、「種類変更」「構造変更」などもそうです。それに年月日がくっついて記録されます。例えば、「平成29年8月31日新築」「令和3年5月1日一部取り壊し」といった感じです。
いつ・誰が申請するか
「表題部変更登記」は表題部に変更が生じた時に申請します。
つまり、上記で説明した表題部のいずれかに変更があった時です。「居宅」が「店舗」になった、床面積が増えた、屋根の種類が変わった、などです。
土地家屋調査士に依頼する場合は地目が変わったことが分かる写真を添付しなければいけませんし、法務局の職員が現地に調査しに来る事もあります。
誰が申請できるか
建物の所有者が申請できます。
逆に言えば、
お父さんの建物を息子が申請、とか
妻の建物を夫が勝手に申請、というのは出来ません。
ちなみに、亡くなった方名義の建物であれば相続人から申請できます。
共有の場合はどうでしょうか?共有の場合はそのうちの誰か一人からでも申請ができます。
土地家屋調査士に依頼する場合でも、全員から委任状を出す必要はないという事です。
この登記は建物に変更があったことを法務局に報告するような登記なので、共有者のうち誰から報告をしても同じ、というような考え方から、共有者の一人から申請が可能になっています。
申請義務はある
建物表題部変更登記は、変更から1月以内に申請しなければいけいないと規定されています。申請されない場合は、過料の可能性があります。
過料になった、という例は今のところ見たこと聞いたことはありません。
(建物の表題部の変更の登記)
第五十一条 第四十四条第一項各号(第二号及び第六号を除く。)に掲げる登記事項について変更があったときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人(共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物の場合にあっては、所有者)は、当該変更があった日から一月以内に、当該登記事項に関する変更の登記を申請しなければならない。
不動産登記法第51条
所有権証明が必要
表題部変更登記の中でも、「床面積が増える」登記については、「所有権証明書」と呼ばれる書類を用意する必要があります。
例えばAさんの建物が登記されており、10㎡増築された、あるいは離れとして物置が新築された場合などです。
もともとの建物がAさんの所有ではあるのですが、
増築部分、あるいは離れの物置がAさんの所有であることが客観的に説明できる書類が登記に必要になります。
所有権証明書になる書類の例としては、以下のものがあります。
- 建築確認済証
- 検査済証
- 固定資産税の納付証明書
- 工事代金の領収書
- 工事完了引渡証明書
- 売渡証所 etc
どんな時に必要になるか
基本的には、上で説明した通り、増築など、建物に変更があった時から1月以内に申請しなくてはならないという法律はあります。しかし、実際に法務局や役所から指摘されることは稀ですし、科料になるケースはほぼありません。
現実的に考えられるのは、建物を担保にお金を借りるときです。融資する金融機関は、担保にする物件の現況が登記記録と一致しているかを判断します。100㎡の建物が、実際には20㎡増えているのに登記記録は100㎡のままだとすれば、担保価値が正しく表せてないことになるからです。
自分がお金を借りる側でなく、物件を売却する側だとしても、やはり買主がローンを使用する場合、登記が必要になる事が多いです。
どちらにせよ、増築や種類変更があった時は、早めに登記申請することで、急な売却にも対応できます。
増築など、変更があった時から放置して年数が経過すると、必要になる書類が増えたり、書類を集めること自体が大変になります。理由は、工事業者からもらうべき書類がもらいにくくなったり、相続が発生すれば関係者が増えたり、必要な捺印も実印が必要になったりするからです。少なくとも年数が経過することで、手続きが楽になる事はありません。土地家屋調査士に依頼する場合でも、書類の煩雑さは費用の増加につながる事もあります。
まとめ
建物表題部変更登記とは、表題部に変更が生じた時に申請する。
表題部とは、所在、種類、構造、床面積のこと。
申請義務があり、所有者から申請ができる。
共有者がいる場合は、共有者の一人から申請できる。
増築など、床面積が増える申請は、所有権を証明する書類が必要になる。
融資を受ける際、売却の際は必要になるケースが多いので、早めの準備が吉
この記事が少しでもみなさんのお悩みの解決、財産を守る事にお役に立てればと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございます。